松代東京無線 トム13型

大和市の骨董市で入手しました。変わったラジオが目に付いたので、即座に価格交渉。
不動品なのでまけてもらいました。残念ながら銘板の印刷が消えており、型名が
読めなかったのですが、ラジオ工房掲示板が縁で、ラジオ鑑定団)宮川氏の情報から
トム13型と判明しました。更に、ラジオ温故知新)梅田氏によりこの紹介記事が公開
されており、回路図も掲載されています(電波日本1948年11月号)。
(内尾氏及び両氏に感謝!)

入手時:6WC5(JRC), 6D6(JRC), 6D6(マツダ), 42(JRC), 80BK(NEC)
オリジナル:6A7,6D6,DH3,6ZP1,12F
外形寸法:約W350×H250×D200

オリジナルの球はIF増幅6D6だけのようです。(JRC 諏訪無線製、メーカが長野だからでしょう。)
第2検波管が6D6になっていましたが、骨董屋さんが適当な球を挿したようです。
配線はDH3Aに変更されていました。

内部は、とにかく埃と錆が酷く、バリコンも錆だらけで、更に変形しているので途中で短絡します。
ANTコイルもOSCコイルも真空管の交換に合わせて変更されたようです。ダイアル糸は切れて
目盛りが動きません。電源スイッチも動作しないので、スイッチ付ボリュームに交換されています。
かなり手が加えられていますが、何とかオリジナルに近い形で修復することにしました。
(2006年7月入手)


裏から見たところ。裏板はなく、シャーシの固定ネジも一本もありません。
PU入力端子があるのですが、配線されておらず、資料の回路図にも記載がありません。
端子もGNDと短絡されています。量産時に追加したのでしょうか。
ラジオ温故知新の資料は、 こちらからどうぞ。(残念ながらHPは閉鎖されました。詳細はメールください。)
入手時回路は、こちらです。
最終修復回路は、こちらです。


銘板の印刷が消えています。


ケースから出したところ。スピーカのセンタードームが破損しています。
木枠は歪んでおり、埃が酷いです。


上から見たところ。


スピーカは鋳物でがっしりしています。ダイアル糸がボロボロです。


ダイアルを外したところ。スピーカのフロントガスケットは、虫食いの跡が酷く
原型を留めていません。トランスの錆もご覧のとおり。


シャーシ内部。コンデンサ類は殆ど全滅のようです。
VRがSW付(ナショナル1956年製)に交換されていますが、既にガリオームです。


高周波部分。6WC5に交換したときにコイルも交換したようです。


低周波、電源部。シャーシがコンパクトなので部品が込み入ってます。


ブロックケミコンです。紙ケースで、ネジ止め部はハトメが打ってあります。
埃とカビで文字が殆ど読めません。


慎重に汚れを落とすと、僅かに文字が読み取れるようになりました。


リード線が6本出ています。3本は配線されていますが、3本は切断されています。
右のラベル印刷から推定すると、10μF×2を使用し、残りの9μF, 6μF, 1μFが
3本に該当すると考えられますが、何故未使用なのか不明です。
線の色も付いていません。ラベルと内部が一致していない可能性有り。



OSCコイルとANTコイル。ANTコイルは、2次側の巻回数を変更したような痕跡があります。
1次、2次とも1点でGNDに接続されていますので資料のようなAVC配線がありません。
変更したようで、修復が思いやられます。
(インダクタンスはANT;1.2mH/220μH, OSC;3.6μH/116μH)


戦前・戦中によく使われた電源スイッチです。
バネがへたっており、ON/OFFが上手く切り替わりません。
バネ材を曲げて作りましたが、OFFが上手く動作せず今一つでした。


ダイアルエスカッション。周波数帯が変わる前なので550kc〜1500kcです。
ここにMODEL-13の印刷がありました。


カーテンレールに似た構造でしっかりしています。
グリスが固化して針が動かないため、ブラシで落としました。


取り外した真空管。JRC諏訪無線製が多い。

    
このラジオ用に製造したらしいケミコンです。出力管のカソードバイアス用。


電源1次側のマイカコンで、「空ウ−4型」0.01μF。劣化して使えません。


丸形IFT。試作では空芯コイルだったようですが、量産でダストコアになっています。
1次コアはケースに固定されています。同調Cは100pFのマイカです。


6W-C5→6A7、DH3A→DH3に変更するので、グリッドキャップが必要になります。
秋葉原で探すと数百円もするので、自作しました。薄い真鍮板を短冊状に切って、
六角形に曲げ、リード線部を曲げれば完成です。


Utソケットですが、取付穴があるので、4ピンが内側にきています。
省スペース用に考えられています。


5"パーマネントダイナミックスピーカです。
出力トランスは寸法が合っていないので、交換されたようです。


鉄心の錆が酷いので、一旦分解し清掃です。


幸いコイルは断線していませんでした。「加藤電機製作所」製。


一番やっかいなバリコンです。どうしたら、こんなに錆が出るのでしょうか?
足も曲がっています。


ローテータの羽根が曲がっており、接触します。フレームの鉄板も強度不足で歪んでいます。
おまけに錆だらけと最悪です。


仕方がないので、全て分解清掃としました。


再組立です。位置決めが難しく、色々検討した結果、厚紙を全ての電極間に差し込み
ギャップを確保しました。案外上手くできました。


修復後の内部です。この時点では、PLの配線がまだです。一部のCRは再利用しています。
ボリュームはツイストペアでハム対策しています。交換したボリュームは、軸が短いので
パイプで延長します。


ダイアル取り付け前の状態。シールドケースがないので、アルミフォイルで代用し
1次調整しているところ。910kHz付近で発振しましたが、IFTの同調C交換(100pFが80pFに容量減)
で対策。(津田さんからのアドバイスです。)


糸かけは、プーリーの位置を考慮して決めました。たぶん間違いないと思います。
バネはホームセンターで調達できます。取付は水道パッキンですが、ゴムブッシュがよいです。


ダイアルエスカッションを取り付けたところです。PLはゴムブッシュで固定しています。
6D6のシールドはサイズ不一致ですが、機能的にはOKです。オリジナルのケミコンは飾りです。


調整完了し、ケースに収納。固定ネジがないので取扱注意です。
旧JISネジが入手できるまではこのままです。


ツマミを取り付け、長期戦の終了です。足かけ半年の苦戦でした。
非常に高感度で、外部アンテナ無しで都内キー局が十分すぎる音量で入感します。

最後に苦戦したのが、ダイアルの目盛り合わせです。バリコンが均等に回転するように
セッティングすると、両端で合わせた場合に中央では100kHz以上ずれます。
バリコンとコイルが交換されているためと思い、あきらめようとしましたが、
逆に目盛りと一致させたときのバリコンの容量変化をシミュレーションしてみました
(回路図から共振周波数を求めて、エクセルで計算)。右図がそれです。
ここで、バリコン本来の容量変化を測定してカーブを書くと緑線のようになり、約19度右に
オフセットさせてやれば、ほぼ理想と一致することが分かります。
注)約20度で550kHz、約170度で1500kHzとなっています。
実際に、ダイアルの指針を周波数の高い方に19度前後移動させてやると、見事にメモリが
一致するようになりました。(ラジオ工房掲示板の皆さんにもアドバイス頂きました。)


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