ナショナル国民受信機 Z-3

何故か、ナショナルのZ-1からZ-3までを集めてみようと思い、オークションで落札した高一ラジオZ-3です。
このZシリーズの種類は非常に多く、新Zシリーズも存在し、Z1〜Z3で新が付かないものと付くもので6種類あります。
昭和13年には、同じ球構成で新Z-3が発売されていますので、このZ-3は昭和11年か12年頃と思われます。
24B, 47Bがそのまま残っている例は少なく、このラジオのように57S, 3YP1に交換されているのが殆どでは
ないでしょうか。特に47Bは切れやすかったので、まだ生きている47Bにお目にかかったことがありません。
残念ながら本機の程度は悪く、内部はかなり修理されていました。検波・再生コイル交換、
プレート容量再生に変更(オリジナルはスクリーングリッド抵抗再生)、検波管の低周波チョーク負荷から
抵抗負荷に変更などです。シャーシは錆が酷く、ケースも煤で黒くなっています。
秋田の近藤さんが回路を紹介していますが、そちらがオリジナルのようです。

入手時の回路は、こちらです(PDFファイル)。
今回は、コイルが異なるので入手時の回路で修復してみました。
入手時:UY-57S(マツダ), UY-57S(マツダ), 3YP1(マツダ), KX-12F(エレバム)
オリジナル:24B,24B,47B,12F
(2005年12月入手)

裏から見たところ。


        銘板です。


シャーシ上面と電源トランスのカバーは、かなり腐食が進んでいます。埃のこびり付きもあります。


マグネチックスピーカーです。コーン紙の一部が破れていますが、問題ない程度です。
上部に赤く「Z-3」と捺印されています。


シャーシ内部の全体です。コンデンサ類は全滅のようです。
真空管ソケットはRF段のみ交換されていますが理由は不明です。


電源用角形ペーパコンは完全に破裂しています。スピーカ配線はビニル電線なので
戦後の比較的新しい時代に修理したようです。


本来、シャーシ中央部にあったANTコイルがなく、側面に再生コイルが取付られています。
ここには低周波チョークトランスがあったはずです。電源チョークは生きています。
(マイナス側に電源チョークを入れた回路では、断線しにくいようです。)
  再生もボリュームから豆コンに変更されています。


左から、12F, 3YP1, 57S, 57Sです。オリジナルは12Fのみ。


ダイヤル糸は切れています。何故か指針が丸く変形しています。
どこかに引っかけたまま回したのでしょうか?メモリ表示はkcです。


バリコンは埃が酷いので分解清掃です。コストを下げるため、回転部にはベアリングを使用していません。


角形ペーパーコン内部を取り出したところ。


内部に新しいケミコンを入れます。シリコーンを充填すればよいのですが、
面倒なので厚紙で底板を作ってみました。350V 4.7μF×2


黒く塗りつぶして、エポキシで固定すると、それなりに見えますが、内部が空洞なので軽いです。


トランスの錆が酷いので、清掃のため取り外しました。Z-3の捺印が見えます。


比較的新しいものに交換されていたコイル。左:ANTコイル、右:DETコイル


錆を落としてピカールで磨くと、かなり綺麗になります。右側のシールド板上部の穴は、
回路変更で追加改造されたものです。左の端子はPU端子であることが判明しました。


シャーシ内部を清掃し、電源トランスを取り付けたところ。外側は錆が酷いですが、内側はわりと綺麗です。


部品をすべて取り付けたところ。PLはホームセンターで2.5V球が買えます。


抵抗はそのまま使いましたが、コンデンサはディップマイカ、フィルムに交換。使える線材はそのままです。


ダイヤル糸は張り替えました。結構コツが要ります。


スピーカをつないで通電テスト中。でも、周波数目盛りが100kHz程低い方にずれています。
トリマでも調整できません。コイルを交換したためインダクタンスが増えたようです。
コイルが入手できるまでは、当面、このままにしておきます。


綺麗になりました。高一なので、アンテナ線なしでも都内キー局がそれなりに聞こえます。
2m程のビニール線をつなぐと、夜はうるさいほどです。


【修復後記】
入手時はRF(57S)-DET(57S)-AF(3YP1)の並びで修理されていましたが、
RF段にPU端子らしきものがあるので、どうしても理解できませんでした。
ラジオ工房の掲示板で相談したところオリジナルはDET-RF-AFとなっていることが判明しました。
これでDETのグリッドにPU端子が接続されることになり納得できます。
非常に変わった配置で悩みました。何しろ電源トランスの横にアンテナコイルがあるのですから、
通常では考えつきません。てっきり再生コイルと思い込んでしまいました。
シャーシ内部中央にあるのがANTコイルで、シャーシ上にあるのが再生コイルなのですが、
修理で入れ替えられてしまったようです。修復してみると、確かに、入れ替えると配線が楽になります。
何かしらのこだわりがあったのでしょうか?(2008/9/20)

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