ナショナル国民受信機 Z-2(その2)

1台目の修復では、回路が大幅に変更されていたので、オリジナルと思われる2台目を入手しました。
オリジナル回路は1台目のときに情報をいただいていたので、2台目でその確認をすることにしましたが、
期待通り、修理した痕跡はありませんでした。表面はかなりの汚れで真っ黒です。

ナショナルは技術的に面白い回路のラジオが結構あります。
入手時の回路図はこちらです。
回路の詳細については、1台目の修復を参照してください。
ナショナル Z-2(並四)

昭和12年頃発売
真空管:UY-27A(マツダ), UX-26B(マツダ), UX-12A(マツダ),KX-12B(マツダ)
すべてマツダの刻印タイプで当時のオリジナルのようです。
(2012年7月入手)


電源コードは根本から切断されていますので、動作不良になって修理しなかったものと思われます。
アンテナ端子、アース端子が欠落しています。






シャーシを取り出したところ。かなり埃だらけで、ダイアル糸が切れています。
パイロットランプは生きていました。電源のチョークコイルは断線していました。
1台目のシャーシは茶色の塗装ですが、これは灰色です



シャーシ内部です。ペーパーコンデンサは全滅ですが、抵抗はすべて使えそうです。
低周波トランスも断線していませんでした。



左が1台目、右が2台目の筐体底部です。
1台目は木枠で底上げがしてありますが、2台目は単純なゴム足になっています。
おそらく1台目の方がコストが掛かっているので初期バージョンと思われます。




電源チョークコイルは断線していますが、新品では味気ないので、
久しぶりに分解して巻くことにします。





自作手巻き器で巻いている途中です。写真は5,000回巻いたところです。
最終的には8,000回まで巻きましたが、線径が0.12なので、8,000回は巻きすぎで、
7,000回程度が適当でした。
巻枠の両端のつばをしっかり接着してから巻かないと、途中で剥がれて悲惨な結果になります。




チョークコイルをシャーシに取り付けたところです。8,000回巻いて約40Hでした。




当時、一般的だった電源スイッチです。
バネが折れていたので、ピアノ線を加工して修復しましたが、修理途中で誤って、
ベーク部分が欠けてしまいました。この修理にはなかなかこつがいります。





修復後のシャーシ内部です。電源部のコンデンサは10μFを2個使っています。
表の角形コンデンサの中に入れることもできますが、今回はそこまでやっていません。
黄色いペーパーコンは飾りで、その裏側にフィルムコンが付いています。
配線はすべてそのまま使っています。電源コードは丸打ちコードに交換しました。

茶色のコンデンサは250pFですが、ペーパーではなく線間容量によるものなので
精度を要求しなければそのまま使用できます。マイカは高価なので、コストを考えた部品です。




修復後のシャーシトップです。四角いペーパーコンは飾りです。
ダイヤルの糸は黒く着色したもので張り直しています。

スピーカと電源をつなぎ動作試験をしましたが、何故か途中で音が出なくなります。
低周波部は動作しているようなので、初段の27Aが怪しいです。
よく見るとヒーターが赤くなっていません。接触不良のようです。




27Aのソケットに異常は見られないため、真空管のピン内部の接触不良を疑いました。
ヒーターピンの半田を取り除くと、案の定、リードの半田付けが不十分です。
フラックスを付け再半田付けし、テスターで接続が安定しているか確認しました。




スピーカのサランネットがあまりにも汚いので、うかつにも洗ってしまったところ、
復活できないほどに穴だらけになってしまいました。単純に洗うべきではありません。
サランネットに使える布地が中々見つからないので、最終的には茶色の靴墨を塗ったところ
それらしく見えるようになりました。




シャーシを組込、最終動作確認です。
簡単なリード線を付けるだけですこぶる好調に動作します。

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