ナショナル5S-12 

ナショナルの国民型5球スーパー5S-12。昭和23年9月製造です。一見するとスーパーらしくないラジオですが、
ストレートラジオから本格的なスーパーラジオへの過渡期に製造されたもので、型式試験合格第31号(昭和23年6月12日)。
原価低減のためIFTにシールドケースがなく、初段をシャーシ上に、2段目をシャーシ内部に配置しています。
入手時使用球:6WC5(マツダ)/6D6(マツダ)/6Z-DH3A(ナショナル)/6Z-P1(マツダ)/KX-12F(ロダン)
6Z-DH3Aは発表時UZ-75→6Z-DH3→6Z-DH3Aと変遷があり、最終的な量産品は6Z-DH3Aとなっています。
入手時の回路は、こちらです。
修復後の回路は、こちらです。
周波数変換回路と電圧増幅回路に発表資料と異なるところがあります。
周波数変換回路は、資料ではグリッド同調回路になっていますが、実機ではカソードタップのハートレー回路です。
発振コイルはオリジナルと思われますので、量産で変更したものと思います。
また、入手時の電圧増幅入力回路は、冗長的な回路になっているため修理時に変更したものと思われます。
こちらは資料どおりに修復しました。
(2010年3月入手)


ケース裏から見たところです。




ケースから取り出したところ。埃の堆積と錆がひどいです。ダイヤル糸が切れているので張り直しが必要です。


シャーシ上部。電解コンは修理でブロック型に交換されていますが、使用不可です。
それにしても、状態は決して良いとは言えません。


シャーシ裏です。抵抗はある程度使えますが、コンデンサ類は全滅です。
ボリュームの左にあるのは、裸ですが2段目のIFTです。


KX-12F(ロダン)/6Z-P1(マツダ)/6Z-DH3A(ナショナル)/6D6(マツダ)/6WC5(マツダ)


ボリュームは故障していました(断線状態)。シャフト長を合わせるために、適当な長さのところで切り取り、
新しいボリュームにつぎ足します。但し、厚さ1mmのアルミパイプを使うとナットが通らなくなるので、
厚さ0.5mmのパイプを使います。パイプはエポキシ接着剤でしっかりと接着しないと、後で空回りするようになってしまいます。


左から、2段目IFT、1段目IFT、発振コイル、アンテナコイル(ハイインピーダンス型)。
アンテナコイルに単線を巻き付けた2本の線がありますが、シールドではなく、1本は1次2次間の結合コンデンサ、
もう1本は2次側の同調用です。


初段のIFTです。原価低減のためケースがなく裸状態です。同調コンデンサは100pF。
6D6へのグリッド接続線は単線を巻き付けてシールドしています。今回は中間周波数を463kHzに合わせました。


パーマネントダイナミックスピーカー。型式NPD-65(6.5インチ)。低周波発信器を使って音出しをしてみると、
異様に音が小さいです。通常は出力トランスを疑うのですが、出力トランスの1次側、2次側とも断線はありません。
まさかと思いトランスの2次側配線を外してみると、何とスピーカー側が断線に近い状態でした。これでは音が出ません。


仕方がないので、ボイスコイルの断線と思い、コーン紙を外しました。運よく取り外しが可能でしたが、
元々虫食いでボロボロになっているところがあるので、慎重に取り外します。右側にミミズの這った後があるように見えるのは、
間違って切れてしまった部分を補修した跡です。


意外なところが断線していました。断線箇所が分かるでしょうか?ボイスコイルからスピーカー端子へ接続するための
コーン紙上にあるハトメ端子です。右側は正常、左側はボイスコイルからの線とハトメ端子が断線しています。
これは初めての経験です。


ハトメの修理はできないので、引き出し線に直接ボイスコイルの線を半田付けしました。後は和紙で補強しておきます。


修復後のシャーシ内部です。コンデンサはすべて交換、抵抗も抵抗値が大きすぎるもの、
リード端子が断線したものは交換しました。


ダイヤル糸張替、IFT調整、トラッキング調整し、修復完了です。電解コンデンサは箱型コンデンサがあった場所に2個、
ラグ端子で固定しています。


裏蓋にある「型式試験合格 第31號」


ケースに入れたところ。ちょっと虫食いが気になりますが、スプレーで防虫処理してあります。

←HPへ