真空管試験器 TV-7D/U修理記録


真空管試験器TV-7D/Uの修理依頼がありました。
オークションで「ジャンク品」として購入したそうです。購入時の説明は、
動作未確認、電源ケーブル劣化、その他多々不具合があるとのこと。
TV-7シリーズは故障内容によって部品が入手できないため、通常であれば
お断りするのですが、一応電源が入って、メーターが振れるようなので
引き受けることにしました。ただ、説明どおり、「ジャンク品」に近いものでした。
基本的に、動作未確認品は動作しないものと思った方がよさそうです。

【シャーシ内部】


電源を入れる前に、ケースからシャーシを取り出しての内部確認ですが、
ネジを外しても、何かが邪魔をしてケースから引き出せません。
構造的に引っかかるものはないはずですが、電源側がくっついている感じです。
何とか引き出したら、原因は電源トランス底面のクッションがケースに貼りついて
いました。かなり劣化していますね。

出だしから問題発生。臭いがきつくて、ちょっと我慢ができません。
アンティーク品の臭いには慣れているつもりですが、今回は性質が違います。
冬晴れの日に3日間ほど天日干しをして、何とか作業できるレベルになりました。

【ライン電圧調整部】


電源はAC100Vとし、スイッチを入れてみるとライン電圧の調整はできるようです。
但し、メーターが微小振動していますので、フィルターコンデンサC103の劣化です。
また、メーター回路の抵抗でR124は本来225kΩですが、実機は160kΩのソリッド
抵抗が付いています。これでは調整出来ないはずですが、実測値が191kΩと
大きくなっているので、どうにか辻褄が合っているようです。



C103(100μF)の容量を測定すると約1,000pFしかありません。完全に容量抜けです。



ラグ端子を使って、100μ/50Vとメーター保護用のクロスダイオードを付けました。
後ろのゴム足も劣化して高さが低くなっていましたので、スペーサーと一緒に交換です。
このゴム足については、別の不具合の原因になっていました(最後に記載)。

【一次電源回路】


ライン電圧を見ていると、時々変動します。接触不良があるようなので、電源スイッチを
確認すると、オン抵抗値が数十Ω〜10Ωぐらいで変動します。接点の劣化ですね。
参考に分解すると、ご覧のとおりスパークで接点がまっ黒です。


安全のため新品に交換します。



電源ケーブルも硬化して亀裂が入っていましたので、スイッチと一緒に交換しました。
柔らかめの丸ケーブルにしたので使いやすくなったと思います。
電源トランスに当たるところは、キズ防止のためチューブを被せておきます。
プラグはそのまま使えました。


【プレート抵抗の交換】


プレート抵抗R103(47Ω)は劣化が早く、一般的に抵抗値が大きくなっています。
ここは計測精度に影響するので交換しておきます。実機も過去に修理したようですが、
52.2Ωとなっているため、酸金抵抗に交換しました。


【ショートテスト部】


この異様な部品は、ショートテスト回路のコンデンサC102(0.1μF)です。
修理交換時に、絶縁テープと思われるものでぐるぐる巻きにされています。
使用環境が劣悪だったのかどうなのか分かりませんが、カビ状のものが
びっしりと付いています。異臭の原因はこれかもしれません。
電気的には正常のようなのですが、気持ちが悪いのでフィルムコンに交換です。




ラグ端子を使って取り付けますが、ネジが長すぎるのでナットで高さ調整します。
ここは、理由があって、ネジが飛び出し過ぎないように注意する必要があるのです。
短いインチネジがあれば、スペーサーは不要なんですが・・・・

【FUNCTIONスイッチS109の修理】


一応、簡単な動作確認は出来たのですが、Gm測定が不安定なときがあります。
調べていくと、FUNCTIONスイッチとテスト用の押し釦スイッチの接触が悪いようです。
真空管ソケットのセレクタースイッチ類は綺麗だったので安心していたのですが、
写真のように、FUNCTIONスイッチは悲惨な状態でした。シャーシ内部全体のカビっぽい
汚れといい、この接点の汚れといい、環境なのか意図的なのかは不明ですが、
とにかく接点を綺麗にしないといけません。

おまけに、よく見るとウエハが割れているではありませんか(赤丸部分)。
ネジでかろうじてポジションを保っていたようです。
最上部のセクションHを取り外しました。何かのストレスで割れたようです。


ソリッド抵抗も抵抗値が大きくなっているので交換し、ステアタイト材料が
接着できる瞬間接着剤で接着した後、周囲の穴を利用して紐で補強します。
紐も接着剤で固定すれば、かなりの強度が期待できます。


その下のセクションGもご覧のとおりです。これでは全滅ですね。
接点が何故か黒いオイル状のもので濡れています。カビと関係があるのか、
何かを吹き付けたのかもしれません。
本来ならば、配線を外してスイッチを取り出し、接点を洗浄するところですが、
べらぼうな時間が掛かります。


そこで考えたのが、できるだけスイッチをフリーな状態にして、配線を付けたまま
隙間から大量の接点洗浄剤を吹き付けて、汚れを洗い流すという方法です。
速乾性で残留物が残らないサンハヤトのRC-S201を用いました。
洗浄後はエアダスターでゴミを吹き飛ばしておきます。
かなり綺麗になったので、押し釦スイッチ部も同様の方法で洗浄しました。
これで、どうにか実用レベルにはなったようです。


FUNCTIONスイッチ汚れのあおりを受けて、近くのスイッチも汚れがあるため
清掃しておきます。写真はカソード用セレクタースイッチです。
ついでに抵抗R101(1MΩ)も交換しました。これ、カーボンに見えますが金皮です。


【ソケットセーバー】

スイッチ類の接触不良が解消されましたが、何となくソケットセーバーも接触が
いまいちです。写真はmT7ピンとmT9ピンのソケットセーバーです。
分解して、ソケットピンを清掃しましたが、改善できませんでした。
スプリング性能が劣化しているようなので、残念ですが使用は諦めました。


【調整とパフォーマンス試験】
以上で不具合箇所の修理ができたため、マニュアルに従い、最終的な
各種電圧の調整と試験が正常に完了できました。Gmは手持ちのTV-7D/Uとも
よく一致しています。

と、気をよくして真空管17EW8を測定すると、なんとGmが1.3倍くらい大きいです。
これまでの経験からすると、特定の真空管でGmがおかしくなるのは、
バイアス電圧が一番怪しいので、詳細な変化特性を測定してみました。
下図のように、バイアス目盛13〜21のところが不連続になっており、電圧が
大きいです(バイアスが浅い)。マニュアルでは、0, 22, 50, 75, 100で
バイアス電圧を確認するようになっているので、ここは盲点になっています。
17EW8はバイアス設定が13なので、丁度、不連続部分に入ったところでした。
念のため、本来のバイアス電圧となる17付近に設定すると、正常なGmとなりました。

このボリュームは特注仕様ですので入手不可です。分解して、巻線ピッチを
微調整してやれば修復できるのかもしれませんが、時間の関係もあり、
このままにすることで、依頼人に了承していただきました。
バイアス設定が13〜21のときは、Gmが大きく出るので注意が必要です。



【グリッドキャップケーブル】
ST管ではトップグリッド真空管があるため、グリッドキャップケーブルが必要です。
手持ちの部品で製作しておきました。


【FUNCTIONスイッチ破損の原因】
想定外の不具合が多々ありましたが、何とか実用になるレベルになりました。
さあ、ケースに戻そうと思って、ケースの底を見ると、7か所に打痕があります。
(トランスのクッション材もへばりついていますね。)
これは、調整用ボリュームの軸がぶつかった打痕です。
下の写真で分かりますが、ゴム足が低くなったことに加え、ケースの凹みもあり、
ボリュームの軸がケース底面にぶつかり、FUNCTIONスイッチの固定ネジに
衝撃が加わったものと思われます。ネジも緩んでいました。
ゴム足とスペーサーを交換し、適切な高さが確保できるようにしました。





【まとめ】
バイアスボリューム以外は、何とか実用レベルに修理できました。
FUNCTIONスイッチには参りましたが、トランス、メータや整流管が正常
だったのは幸運でしたね。
オークションでは、よく動作未確認のTV-7シリーズが出品されていますが、
修理が必要だと思った方がよいです。

2026年1月17日 作成


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