ナショナル国民受信機 新Z-1
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所謂、戦後の国民型受信機ではなく、ナショナルが独自に国民受信機と命名した
Zシリーズで、これは3球ペントードです。
定格銘板は「Z-1」ですが、試験票には「新Z-1」となっているのでZ-1の後に
発表されたもののようです。スピーカグリルが2種類あるのはこのためです。
益田氏のHP“のらねこ商会”にZ-1の回路図が掲載されていますが、本機の回路を
調査すると多少異なるところがありますので、新Z-1型の時に改良したものと思われます。
かなりポピュラーなラジオのようで、WEBでもいくつかの修復記録がありますが、
新Z-1としては、ラジオ工房(内尾氏)に記録があります。
実機から起こした回路図は、こちらです。
煤で黒くなっていますが、丁寧に磨くと綺麗な色が出てきました。(最下段参照)。
昭和13年頃発売
入手時:UZ-57(マツダ), 3YP1(マツダ), KX-12F(マツダ)
オリジナル:57,47B,12B(or 12F)
(2005年12月入手)
裏から見たところ。57のグリッドには、簡易的なシールドキャップが付いています。
IFTのケースを加工して後で付け足したようです。
銘板はZ-1のままです。
試験票には、「新Z-1」とあります。残念ながら年月がありません。
Z-1の翌年に発売されたようです。
シャーシを取り出した後です。酷い埃ですが原形を留めている証拠でもあります。
引き出したシャーシ。縦型ダイヤルは、糸とプーリーで移動するようになっています。
廉価版にしては凝っています。
シャーシ内部です。ほとんどオリジナル部品が残っています。
トランスには“Z-1”の印が見えます。70年近く経過していますが、
低周波チョークも高周波チョークも断線せずに使用できます。
但し、通電にあたっては安全に十分注意が必要です。
アンテナコイルが2重になっており、内部にはグリッドリーク抵抗とコンデンサが見えます。
外側はアンテナコイルと2次側同調コイル。
内側は、AL用のアンテナコイルと再生コイルとなっています。
1次側は約1.2mH(図では1.1mH)のハイインピーダンスコイルですが、
AL用に約50μHのコイルがあります。
その端が250pFで接地されています。接続は回路図を参照ください。
色々実験しましたが、理由がはっきりしませんでした。250pFを外すと感度は上がりますが、
再生の効きが悪くなります。同調コイルの自己共振が1.2MHzで、AL回路の共振が1.3MHzで
近いことは分かりました。また、実態に沿うように回路図を書き換えました。(TOPの欄を参照)
防湿のため高周波ワニスを塗っておきます。
通常、グリコンはマイカが多いのですが、安くするために特殊なコンデンサを使っています。
蝋を溶かして中を取り出したところです。
拡大したものです。太いエナメル線をコイル状に巻き、その上に細いエナメル線を
巻き付けることによって、線間容量で250pFを実現しています。マイカは高価なので、
廉価に実現するための工夫でしょう。
ペーパーコンデンサは放マーク品です。
ブロックコンデンサは、ピッチが漏れてくるため、エポキシでシールしてしまいます。
実際には使用できませんが、シャーシには取り付けておきます。
清掃をして、再配線します。コンデンサ類は交換します。抵抗は全てOKでした。
ブロックコンの端子を利用してラグ端子を取り付け、新しいケミコンを取り付けます。
ケミコンが小さいので、ラグ端子の裏に隠れるように配置しました。
線材は、使えるものは残しています。安全上は良くありませんので、何かがあったら自己責任です。
最終動作確認中。70年近く経たラジオです。パイロットランプは切れていたので2.5V球に交換。
感度が低く、歪んだ音がします。1m程度のリード線では、TBSしか聞こえません。
この球構成では仕方がないでしょうか?
コイル不良かどうか確認するために、市販の並四コイルに置き換えてみました。
大きな差がないため、コイルが原因で感度不良ではないようです。
当初Qが44程度なのでコイル不良と疑いましたが、測定ミスで85はありました。
結局、コイルを再組立し、アンテナ線を4m程度に変更。
AC入力ラインに0.01μFを追加することで、夜間であればローカル局が問題ない感度で
入感するようになりました。このラジオ、1-2mのリード線では駄目なようです。
(入手時はACラインにコンデンサが追加されていました。オリジナルでは付いていないのですが、
ノイズ対策だけでなく感度が不足したのかもしれません。)
ダイアルはビーズの球を糸に接着したものです。
現在のダイアル糸は白いので黒く塗らないと糸が見えてしまいます。
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