東芝:ステレオ6球スーパー TAS-5 and TSS-5

1961年に発売されたステレオアンプ/ラジオで、AMラジオが2つ入っています。
当時はNHKが2周波を使ってステレオ放送を行っていたため、数社からこのような2 in 1のラジオが作られました。
東芝が独自に開発したヒーター電流100mAのトランスレス用の真空管を使っています。
検波をIN60、整流をセレン整流器としているために真空管3本で1つのラジオを構成しています。
左がAM専用、右がAM/SWの2バンドになっています。写真では、左右のスピーカにある東芝のロゴが無くなっています。
入手時は真空管のヒーター電源が入らない状態でした。ネオンランプは点灯します。
なお、写真のスピーカーは、2台目で入手したものです。

昭和36発売
18FX6A(Conv.), 28RHV2(IF/AF Amp), 45MP21(Out)
(2012年3月入手)










回路図がケース底面に貼り付けられています。


取り出したシャーシです。





抵抗、コンデンサはほぼ使えますが、カップリング用のコンデンサは損失が影響するので交換します。


左のIFTは475kHzで、ビート妨害を防止するために20kHzずらしていますが、現代の関東地区では逆効果になります。
TBSが954kHzのため、IFが475kHzだと、その2倍が950kHzとなるため、TBS付近を選曲するとビートが発生してしまいます。
475kHzから472kHzに変更しました。全国のAM周波数を調べると、民放では秋田と宮崎で936kHz、NHK第1では963kHzが
多くの地域で使われているので、そこを避ける形としました。
これで2倍のIFが944kHzとなりますので、936kHz, 954kHz, 963kHzで問題なくなります。
3か所(滋賀、徳島、長崎)のNHK第1で945kHzがありますが、ここはあきらめます。



右のIFTは通常の455kHz


真空管は、右から18FX6A(Conv.), 28RHV2(IF/AF Amp), 45MP21(Out)です。
特性は各々 12BE6,12BA6+12AV6/3極部, 30A5に類似しています。流通量が少なく、当時も高価だったのではと思います。



電源が入らない原因は、ヒーター回路の抵抗の断線でした。抵抗は140Ωですが、正常側の実測値で150Ωに近かったため、
150Ωで代用しました。シャーシにねじ止めする必要があるので、オリジナルの抵抗器にパラで取り付けます。


取り付けると、こんな感じになります。


ボリュームは1MΩで、昭和36年10月製造となっています。完全にガリオームになっているので交換が必要です。
500kΩは普通に入手できるのですが、φ24mmの1MΩはなかなか見つけられませんでした。
ラジオ工房の掲示板で相談したところ、サトー電気にあることが分かり助かりましたが、
ここではその前にアマゾンで入手したφ16mmのものを使うことにしました。



ボリューム交換後のシャーシ側。カップリングコンデンサも交換です。





0.005uFが2倍以上の容量になっており、
損失も大きくなっています。通常、D値は0.01以下です。


ボリュームの軸が短いので、アルミパイプで延長します。φ16mmだと位置決め用の穴位置が合わないので、
歯付き座金で固定しました。実用的にはこれで問題なく、回ることはないようです。


ACラインのコンデンサは、安全のため安全規格に対応したものに交換します。


このラジオは、ダイアルの指針がケース側に付いているので、ダイアル糸を外さないとシャーシが取り出せません。
非常に嫌らしい設計です。


調整するためには目盛りが必要なので、デジカメで撮った目盛を実物大にコピーして貼り付けます。
IFTを調整後、目盛合わせとトラッキング調整で完了です。



外観を掃除すると、結構綺麗になります。やはり、スピーカーのロゴが無いと締まらないですね。

いつもお世話になっているラジオ工房の掲示板が縁で、エンブレム(ロゴ)プレートを1枚頂くことができました。感謝です。
それを元にしてレプリカを2枚作製することにしました。オリジナルはアルミプレートですが、やや黄色がかった色なので
真鍮板でやってみます。
スリーエムがA-oneブランドでは販売している転写シールを使います。オリジナルをスキャナーで読み込み、
画像処理ソフトで体裁を整えた後、表裏反転させます。プリンターで印刷したのが下の写真になります。
スキャナーの分解能があるので、よーく見ると、ギザギザがあるのが分かります。


オリジナルと同一サイズにカットした真鍮板に、手順に従ってシールを転写します。
仕上げは、保護とつや出しを兼ねてスプレー式のクリアラッカーでコーティングします。
右端がオリジナルのプレート、左の2枚が今回作製したレプリカのプレートです。
スピーカに貼り付けると、さすがに見違えるように立派になりました。







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