山水 レシーバーアンプSAX-350D

電源は入るが、右側の音が出ない状態のものをヤフオクで入手しました。チューナーは動作しています。
入手できるマニュアルはSAX-350Aでしたが、内部は殆ど同じでした。
おそらく、仕向け地によって型式を分けていたのではないでしょうか。(Dは国内向け?)

1970年 定価¥54,900-


裏側です。特に破損はないように見えます(実は破損があったのですが)。


何と、底面のネジが4か所とも止められていません。但し、左右両サイド4箇所でネジ止めされてるので、特に支障はありません。
たぶん、以前の持ち主も、そのためにねじ止めしていなかったのかもしれません。
気持ちが悪いので、修理後にネジを追加しておきました。


ウッドケースを取り外すと、底面の板金が出てきます。


内部はこんな感じです。ICは使われておらず、すべてディスクリートで設計されています。
右上のシールドカバー内は、プリアンプが入っています。


シャーシの裏側です。基板のGNDがシャーシに直接半田付けされており、メンテナンス性は悪いです。


電源は入るのですが、適切な電源ヒューズが使われているか確認しようとしたら、ヒューズホルダーのネジが外せません。
何とか外すと、内部の金具が折れ曲がっていました。無理やり締めたようです。
何故そうなっているかは、次の写真を見ると分かります。


ヒューズホルダーの内部に半田付け部が見えます。半田が邪魔してヒューズが入っていかないのです。
ここに無理にヒューズを押し込んだようです。


ヒューズホルダーを取り外しました。金具が折れたので、内部から直接リード線を引き出しています。
安全性に関わるため、新品のホルダーと交換しました。


ヒューズが直ったので、先ずは右側の音が出ない修理に取り掛かります。
回路の電圧をチェックすると、ドライバー用トランジスタの出力電圧が出ていません。トランジスタを外してチェックしましたが
正常なので、バイアス電圧を確認すると、ベース電圧が0Vです。原因はベース電圧調整用の半固定ボリューム(赤丸)の接触不良でした。
取り外して、清掃すると正常に電圧調整ができるようになりました。念のため左側も清掃しておきます。


これで右側の音は出るようになったのですが、左の音がやや小さいです。
SGからAUX端子に信号を入れて確認すると、400Hzで差が大きく、1kHzではほぼ同じです。
パワートランジスタの出力は同じなので、出力コンデンサ35V/1,000μF(黄色の丸)を確認しました。


LCRメータでチェックすると、1kHzで損失Dが10.09もあります。正常なら1.0以下です。


オーディオ用のケミコンと交換です。当然、正常な右側も交換しないとバランスが取れません。


トーンコントロール基板です。
幸いにも、各VRにガリもなく変化はスムーズですが、どうも右側のゲインが少し大きいのです。
このままだと、バランスVRをセンターにしても、左右の音量が異なってしまいます。ケミコンとリードが黒くなった2SC458を全て
交換しても改善しないため、最終的には抵抗で微調整し、約1.5dBの差が、0.8dBまで改善できました。
なお、2SC458LG(B)は2SC2310(C)に交換しています。


ここまでで、オーディオアンプ部分は修理できたので、次はチューナーです。
受信はできておりフロントエンドは問題ないので、IF基板の調整を行います。上がFM用、下がAM用のIF回路です。
2個の半固定VRはレベルメータの感度調整用ですが、マニュアルには記載がありません。
実用的には問題ないので、このままとしておきます。


IF Genescopeで見たAM回路のIF特性です。マーカーは455kHz±10kHzです。



FMのIF特性です。
対称性が少し悪いのですが、フロントエンド側にセラミックフィルタが1個入っているため、調整にも限界があります。
マーカーは10.7MHz±0.15MHz



次はMPX回路の調整です。ステレオ復調はダイオードによるスイッチング方式です。
最後に、AM、FMの目盛合わせ、トラッキング調整をしてチューナー部は完了です。


プリアンプのシールドカバーを外したところです。ファンクションスイッチと一体になっています。
最初は分からなかったのですが、ステレオ分離調整用のVRがこのプリアンプ基板に実装されていました。
MPXのコイルとこのVRを交互に調整することになります。


一通りの修理と調整が終わったのですが、ラジオを聞いていると、時々、ポップノイズのような、ブツブツというような、
嫌らしいノイズが出ます。
この出所を調べるのに非常に手間取りました。オシロスコープで左右CHのノイズ波形を観測すると同じタイミングで同じような
波形であることが分かりました。ということは、左右CH回路内部ではなく、共通する回路に不具合があることになります。

そこで電源電圧の波形を確認したところ、写真下段のようなノイズが時々発生し、それに同期して上段の出力波形に
ノイズが出ることが分かりました。(電圧スケールはX10倍)


定電圧電源用のトランジスタを触るとノイズが変化するため、取り外してチェックしましたが、トランジスタ自体は正常でした
(2SC1061(A), hFE=50)。但し、結構熱くなります。

原因は放熱板との熱接触不良による放熱不足でした。放熱グリスが劣化して、ヒートシンクに十分熱が伝わらなかったようです。
放熱板を綺麗に清掃し、放熱用シリコンを塗りなおしました。これでようやくノイズが解消できました。


フロントパネルのバックライトは、ヒューズ型のパイロットランプでした。
今回は切れていませんでしたが、メーターランプ用として現在も入手できるようです。


今回交換した部品一式です。



修理完了です。ブラックパネルがとても綺麗です。
他にもレシーバーアンプは所有しているので、このレシーバーアンプは、お嫁に出しました。

2022年9月17日
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