ビクター:5球スーパー R-500

ST管とGT管を組み合わせた5球スーパーです。周波数混合に6SA7-GT、検波に6SQ7-GTを用い、その他はST管になっています。
GT管ラジオは何機種か製造されましたが、ST管/GT管混合機種は少ないように思います。本機は昭和28年製造ですが、
すぐに後継機R-501が発売されましたので、短命に終わったようです。R-500はスピーカーがフィールドダイナミックで、
励磁回路はセレン整流器を使用しています。R-501はパーマネントダイナミックになっているので、回路が簡素化されています。
公表されているR-500の回路図は一部が間違っており、R-501で修正されているため、併せて見ると分かりやすいようです。

昭和28発売
入手時:6SA7GT(TEN), UZ-6D6(ナショナル), 6SQ7GT(マツダ), 6ZP1(NEC), KX-80HK(マツダ)
(2013年1月入手)



裏蓋を外したところ。特徴的なのは、左の四角い枠がループアンテナになっているところです。




ケース内部のラベルです。


取り出したシャーシです。相当の埃がこびり付いています。ネズミの尿なのか雨ざらしになったのかは分かりませんが、
普通の堆積状態ではないです。


シャーシ内部です。ほとんどオリジナル部品が残っていますが、一部修理した形跡があります。
オイルコン、ケミコンは全滅なので、すべて交換する必要があります。


フィールドスピーカーです。コイルは2500Ω、40mA。製造年月日が昭和27年8月31日となっています。


ケミコンに製造年月日がありました。1952年7月30日となっています。スピーカと同時期になります。


スピーカのフィールドコイルは、このセレン整流器で直流駆動されます。
動作時は結構発熱するので、シャーシ側には放熱用の穴が開けられています。


いつもはブロックケミコンは飾りとして残しておきますが、今回は中身を交換して再生してみることにしました。
ケースの絞りを広げれば底板が外れる構造になっています。内部は10μFが3個入っています。


手持ちの10μF/350Vを3個組み合わせます。固定にはバルサ材を丸く切って使いました。
マイナスリードは、ケースに挟み込むようにします。


端子を取り付けて、ケースを元に戻します。



2段目のIFT内部です。同調コンデンサは100pFです。通常ならIFTは4端子ですが、内部にAGC電圧用の抵抗(1.6MΩ)が入っており、
5端子になっています。回路図があるので分解せずに分かりましたが、初めて見ました。内部もかなり埃が堆積しています。



1段目のIFTはこんな感じです。
同調コンデンサは上下とも100pFです。




当然ですが、バリコンのゴムブッシュは融けてカチカチになっていました。これに合うブッシュを探すのに苦労しました。




外したバリコンは清掃して、ベアリングにグリスします。トリマのマイカが劣化していますが、何とかそのまま使えそうです。
親子バリコンになっており、局発側は約300pFでした。



結局、最適なゴムブッシュが見つからず、適当なものを組み合わせて厚み調整しました。




ダイアル糸は切れていたので張りなおしました。



修復後のシャーシ内部です。ボリュームは分解清掃してガリオームが解消できました。
抵抗は多少抵抗値が大きくなっていても、焼けていなければそのまま使えます。
AC100V入力部のコンデンサは安全規格を取得したものを使います。




全ての部品を取り付けたところ。



IFT調整はTRIOのIF GENESCOPE 5220というものを入手したので、それを使ってみました。
このIFゼネスコープについては、別途調査報告をまとめる予定です。
極性が逆に表示されていますが、綺麗な形でIFTが調整できています。
中心が455kHz、左右のマーカーは±10kHz離れた445kHzと465kHzです。
縦軸はリニアスケールなので、特性を見るというよりも調整のための計測器です。

ここで問題発生です。IFTを455kHzに調整すると、どうしても発振していまうのです。次の2点で対応しました。
・アンテナコイルから信号を入れると、ループアンテナから信号をばらまくことになるので、完全にループアンテナを切り離す。
・IF増幅の6D6のゲインを下げても発振が止まらないので別の6D6と交換。Cpgが大きいのかもしれない。


IFTの調整が非常に嫌らしいです。コアがナットで固定されるので、緩めないと調整できないのですが、
逆にナットを絞めるとどうしてもコアが少し回ってしまうのです。
コアが回らないようにマイナスドライバーでコアを固定し、レンチでナットを回すというような工夫が必要です。



目盛合わせとトラッキング調整で完了です。


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