NEC 7石AMラジオ NT-7P

NECの最初期ごろのラジオです。13年前にヤフオクで入手しました。
説明では動作するとのことでしたが、確認すると無音の不動品でした。
ノイズも聞こえません。回路図は入手できるので、復活させることにしました。

TR構成:ST172(CONV), ST162(IFA), ST162(IFA), ST301x2(AFA), ST301x2(PWR)
Diode :SD-46(DET)
発売日:1957年(昭和32年)頃
入手日:2011年12月


皮ケースの後がくっきりと分かります。かなり日焼けして退色しています。
カタログでは、サンゴ、オリーブ、ブルーグレーの3色ありますので、これは
ブルーグレーだったようです。ケースもかなり破損しています(後述)。




リアパネルを外したところ。NECの扁平型トランジスタが使われています。
006P電池ではなく、単三乾電池6本で9V電源としています。
外部電源を接続してみましたが、まったくの無音で、消費電流も30mA以上流れます。
電池端子が奇麗ですが、液漏れによる腐食で交換したようです。


修理のため基板を取り外しました。電池が液漏れした跡があります。




動作確認のため、バリコンとスピーカーは基板に接続しておきます。


バーアンテナと基板回路をシールドするために薄い銅板がはんだ付けされています。
いかにも初期らしい製品です。



基板のはんだ面は、こんな感じです。ケミコンは完全に劣化しているので
交換が必要です。


部品面のケミコンを交換すると、大きさがとても小さくなるので、見た目が変わります。
できるだけ雰囲気を残すため、すべて半田面に取り付けました。
ケースやスピーカーのフレームにぶつからないように、注意して取付位置を考えます。


基板の次はバリコンの修理です。ゴムブッシュが溶けてつぶれています。
上がRF同調用、下が局発用です。


最初は、普通にゴムブッシュを付けましたが、高さが高すぎて、ネジが止まりません。
フレームの表面側をカットして、皿ネジの頭がフレーム面とフラットになるように
しました。


こんな感じですが、これでもダイヤルがフレームとぎりぎりです。
仕方がないので、最終的には、バリコンの軸部分にワッシャを1枚かませて、
ギャップを確保しました。


扁平型トランジスタは、すべてソケットに差し込むようになっています。
特性が安定していなかった時代なので、選別していたのでしょう。
ソケットに合うようにリードは加工されています。これでは振動で抜けてしまうため、
接着剤で他の部品に固定されていました。
参考までに、hFEは27〜46とばらついていましたが、動作は問題ありません。
回路図と比較すると、トランジスタは次のように改良されています。
ST-16B==>ST172, ST-16A==>ST162, ST-3B==>ST301


結局、無音の原因は、低周波段のカップリングコンデンサの容量抜けでした。
一通りの部品交換が完了し、消費電流を確認すると約10mAに下がりました。
ここから、調整に入ります。
先ずは、IFTの調整からです。写真左は調整前で、455kHzから相当ずれています。
右側のように、センター455kHzに合わせ込みました。
次に目盛合わせと、トラッキング調整を行って完成です。


最終状態の基板の様子です。カップリング以外のケミコンは飾りで残しています。
これがないと、オリジナルの雰囲気が出ません。
回路図では電源スイッチがプラス側ですが、実機ではマイナス側に入っていました。
修正した様子は見られないので、回路図とは違っていたようです。


交換した部品です。真ん中の白いケミコンが、カップリング用のコンデンサです。
元々基板のはんだ面に付いていたケミコンは、この2個だけでした。



ケースを水洗いして、少しは奇麗になりました。ケースの破損個所も接着しています。
感度も問題ないレベルですが、音質は硬い音です。もう少し低音を強調しても
良いような感じですが、60年以上前のラジオが復活したと思えば満足のいく結果です。


皮ケースを付けるとこんな感じになるのですが、悪いことに、ホックがケース上部に
あるため、その部分が大きく破損しています。
おそらく、ホックを止めるときに、強い力が加わって割れてしまったのではないかと
予想できます。或いは、ホック部分を落下させたのかもしれません。
いずれにしても、この位置に大きなホックを配置したのは失敗です。

2025年3月19日
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