NEC 防災無線ラジオNF-125


17年前の2005年4月にオークションで入手したまま保管していたものです。

当時の説明文を確認すると、「動作不良で電源は入りますし真空管も点きましたが肝心の音が出ません。」となっています。
確認すると、電源も入りません。入手時に電源は確認していたと思うので、どうも劣化によりスイッチも壊れてしまったようです。

AM/FM 2バンド真空管ラジオですが、FMが65.27MHz専用となっています。
この周波数帯は、放送波ではなく、市町村における防災行政無線として使われています。
バリキャップによりファインチューニングができるようになっています。



裏側です。


リアパネルを外したところ。AMはバ―アンテナとなっています。アンテナ端子のみでシンプルです。


底面は、メンテナンスができるようになっています。


シャーシを引き出したところです。
AMチューニングはバリコン直結なので、非常に合わせずらいです。あくまでも防災無線が主目的で、
AM放送はおまけの方針なのでしょう。


リアパネルのラベリングです。昭和57年購入とありますが、譲り受けた時期と思われます。

真空管構成
12DT8  :FM用RF増幅、周波数変換
12BA6X2:中間周波増幅2段(後段はAM-IF増幅兼用)
12BA6  :高周波増幅&リミッター
12BE6  :AM用周波数変換
12AV6  :AF増幅
30A5   :電力増幅

検波はAM, FMともNECのゲルマニウムダイオードSD46が使われています。


シャーシの裏側です。



ボリュームのスイッチですが、赤丸に示すように、スイッチ接点を切り替えるプラスチック部品が割れています。
これは交換するしかありません。


いつもどおり、アルミパイプでシャフトを繋いで、長さ合わせをします。


スイッチが直って電源が入るようになりましたが、情報どおり音が出ません。原因はスピーカーの断線でした。
スピーカーの端子を見ると液体で濡れています。これが、ボイスコイルの線材まで浸透したためと思われます。


出力トランス側もこのとおりです。(矢印部分)幸いにも、トランス側は無事でした。

おそらく、線材の絶縁チューブが加水分解されたのではと推測します。



交換用のスピーカーが必要なのですが、大問題発生です。

ケースの後ろからスピーカーを見たところですが、写真のように、ヒューズを上手に逃げるように小さい
マグネットのスピーカーが採用されています。

これは困りました。このようなアルニコマグネットが小さいスピーカーは入手できません。
ヒューズホルダーを移動させようかとも考えましたが、鉄板の穴あけ加工が必要なのと、
部品も混みあっているので大変なのです。



通販では適したスピーカーが見つかりませんでした。外形は約10cmです。

ラジオ工房にもお世話になり、使えそうなスピーカーを頂きましたが、残念ながら、ヒューズホルダーに当たってしまいました。

そこで、秋葉原の目ぼしそうなパーツ屋さんを回ったところ、唯一シオヤ無線さんで寸法的に使えそうなものが入手できました。
外形寸法と取付穴がピッタリと一致します。


全体の奥行も、オリジナルのスピーカーより低いです。フェライトマグネットで、ここまで奥行の低いものは貴重だと思います。


取り付けると、こんな感じです。




ボイスコイルのどこが断線しているのか確認するために、スピーカーを分解してみました。

断線箇所は、写真の矢印にあるように、ボイスコイルから端子に接続する網組線との
半田付け部分でした。線材が分解した液体が、網組線に浸透し腐食させたようです。
ボイスコイル自体は非常に綺麗なので残念です。


空芯コイルのように見えるのは、ACラインのコモンモードフィルタです。ここも、青い液体で濡れています。


内側のコイルも青くなっています。60MHz帯用のラインフィルタなので、空芯コイルを重ねた構造になっています。


電源コードもご覧のとおりです。どこを切断しても、液体が浸透した状態なので、コードは廃棄です。



パイロットランプ用のネオンランプも根元が断線しています。これも、リード線の加水分解によるものと思われる腐食です。



丁度、ラジオ工房さんから頂いた緑のネオンランプがあったのでそれと交換しました。



RF部のコイルです。
FM放送が受信できるように調整してみることにしました。

写真中央がFM用の局発コイルで、コアでインダクタンスが調整できます。
下側ヘテロダインになっているため、受信周波数より10.7MHz低い周波数を発振します。
また、バリキャップSD111の逆電圧をボリュームで調整し、約1.4MHzの可変ができます。

局発コイルの同調コンデンサは橙色なので、-150ppmの負の温度係数です。
きちんと温度補償設計されていますね。

ANTコイルとRFコイルもコアで調整できるようになっています。ただ、特性がブロードなため、
それほどクリティカルではないです。
どこまで周波数を上げられるか確認したところ、86.8MHzまではOKでした。もちろん感度は下がってきます。

なお、FMの周波数を調整するときは、AFCを切らないと調整できません。
回路図がないので、回路を追いかけて、AFC電圧を0Vにしてやります。



不具合箇所の修理が完了したので、調整に入ります。
FMは、最終的に80.4MHz〜81.7MHzに調整しました。これで、80.5MHzのTOKYO FM(八王子)、81.3MHzのJ-WAVEが受信できます。
AMは目盛りをコピーして、周波数調整、トラッキング調整します。


調整も完了し、ケースに組み込んだところです。
AM/FMともに非常に高感度です。ちょっと高感度過ぎて、ボリュームを上げられないため、低周波増幅の利得を少し下げました。

2022年11月26日
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