ナショナル 真空管ポータブルラジオ CW-110

真空管がトランジスタラジオに置き換わる前の真空管ポータブルラジオです。
動作未確認ということで、ジャンクとして出品されていました。
AC/DC100V、乾電池の3ウェイとなっていますが、B電池は入手できませんので、
先ずは外部直流電源で動作確認としました。AC100Vは電源コードが入手できてからです。

このラジオは、高周波増幅付き5球スーパーとなっており、真空管はナショナルの
省電力管Dシリーズで、フィラメント電流が25mAになっています。

真空管構成:1AJ4/DF-96(RF), 1AB6/DK-96(CONV), 1AJ4/DF-96(IF), 1AH5/DAF-96(DET), 3Y4/DL-97(OUT)
発売日:1956年(昭和31年)
入手日:2016年2月


裏側です。専用カバーに入っていたので割りと綺麗ですが、表のエンブレムが欠けているのが
残念です。


リアパネルを外したところ。RF付きなので、部品がびっしりと詰まっています。
真空管は破損防止のため輪ゴムが付いていますが、硬化してボロボロです。


リアパネルには、仕様、シャーシの取り出し方、糸掛け図、回路図が貼り付けられています。


バリコンのダイヤルは、結構複雑な経路になっており、切れると張り直しが大変です。
今回は、特に不具合もなく助かりました。


真空管は5球です。


右端がRF用同調コイル、IFTは複同調タイプで、さすがに上から調整するようになっています。
真空管の輪ゴムは、仮にダイソーのヘアゴムを巻き付けていますが、後で輪ゴムに交換しています。
バーアンテナは、ゴムブッシュを取付、紐で縛りました。


ケミコンとブロックケミコンが容量抜けしているので、電源を入れる前に交換です。
但し、如何せんスペースがないので、ブロックケミコンは分解することにします。


分解すると、こんな感じです。多少の電解液は残っていましたが、定格電圧を印加すると
漏れ電流が3mAもありました。


新しいケミコンを内部に組み込みます。
30μF/150V ==> 33μF/160V
50μF/150V ==> 33μF/160VX2


元に戻すと、こんな感じです。カシメはちょっと見た目が悪いですが、仕方がないです。
100μF/10Vは、100μF/25Vに交換しましたが、サイズが圧倒的に小さくなります。


このスイッチは、接触不良でしたが、AC/DC動作時と電池動作時で役割が異なります。
AC/DC動作時:イヤホンとスピーカーの切替え
電池動作時:出力管3Y4のセーブ/フル動作切替え(フィラメントの接続切替え)


無水エタノールで接点を綺麗に洗浄し、接触不良は解消。
外見はスライドスイッチですが、内部はシーソースイッチになっています。


ボリュームは、0オーム付近でガリがあったため、分解清掃しました。
完全には解消できませんでしたが、この手のボリュームは入手できないので、OKとしました。


ダイヤルの板金には、スタート(540kHz)、600kHz、1500kHzの目印が付けられており、
フロントパネルがなくとも調整できるようになっています。これは親切ですね。


AC100V時の整流はセレン整流器です。
ACラインのオイルコンは不良ではないですが、安全規格に適合したコンデンサに交換しておきます。


ACコードのインレット部は、この寸法になっており、かなり小型の電源ソケットでないと入りません。
ピン間は7.5mmとしましたが、約8mmに近いような感じです。


ネットで色々と調査し、電気シェーバーのコードが近いことが分かりました。
先ず入手したのが、この電源コードです。フィリップスのCW2751という型番です。
そのままだと端子が見えないので、先端を削りました。
端子の穴径は大きいのですが、外側で接触するようです。


次に入手したのが、ジャンクとして出品されていた、同じナショナルの4W-260の付属品です。
これであれば間違いありません。正式なコードはライトアングルのようなのですが、
こちらはストレートタイプになっています。


外部直流電源での動作確認、IFT調整、トラッキング調整は出来ましたので、後はAC動作です。
AC/電池切替スイッチの接点清掃やフィラメント回路の抵抗値確認などの作業をやっていたのですが、
ご覧のような配線密度なので、どこかの段階で1AB6にダメージを与えてしまったようです。
電源を入れて暫くすると局発の発振が停止してしまいます。色々と調べているうちに、段々と症状が
悪化してきて、最後には発振しなくなってしまいました。
真空管試験器で試験しても、gmはそれほど低くありません。変換コンダクタンスは試験できないので
1AB6を交換するしかないようです。
この真空管が入手できなくて困っていたのですが、偶然にも電源コード付きのジャンクラジオが見つかり
ついでに1AB6も交換できました。


交換した部品です。(ブロックケミコンは内部交換)
ソリッド抵抗はフィラメント回路調査時に交換したものですが、使用できたかもしれません。
+20%以上大きくなっていたので、念のため交換したものです。


1AB6を交換し、AC100Vでも正常に動作する様になりました。
革の携帯用ケースを磨いて収納すると、結構綺麗になりました。
さすがに高周波増幅付きとあって、とても高感度です。バーアンテナだけで首都圏のローカルはOKです。

2024年7月28日
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