ヤマハ レシーバーアンプCR-400


通電確認のみで動作未チェック状態のものをヤフオクで入手しました。英文のサービスマニュアルが入手できますので、
破損もなく、電源が入れば修理に問題はないだろうと思いましたが、それなりに大変でした。
左の写真は、修理後の最終写真です。かなり綺麗になりました。これで、アナログ感満載で高音質のFM聞き流しが可能になりました。


裏側です。
AM用のバーアンテナが破損しているものを見かけますが、これは無傷でした。


入手時のフロントパネル

割と綺麗ですが、レバースイッチに腐食があります。電源を入れて簡単に確認すると、ファンクションスイッチの
接触不良がありますが、AM/FMは受信でき、ステレオLEDも点灯します。

但し、AM受信で、チューニング時のみノイズが発生します。チューニングツマミを回した時のみ発生するのです。
シャーシを触るとノイズが出なくなるので、明らかに、ツマミがGNDと接触不良になっているときの現象です。
この当時のオーディオ機器は、アルミの無垢材による贅沢なツマミを使っているので、絶縁するかGNDに接続するか、
きちんと対処する必要があります。


フロントパネルを取り外したところです。


シャーシ内部です。左がオーディオアンプ、右側がチューナー基板、手前がレコードプレーヤー用のプリアンプ、
トーンコントロール基板です。出力が20W+20Wと小ぶりなので、パワートランジスタもTO-220タイプです。


ノイズ調査のためチューニングツマミのシャフトを外しました。グリスが劣化して固着しています。接触不良の原因はここでした。
綺麗に清掃し、潤滑油を塗ることでノイズは無事に解消できました。
黒いものは、チューニングを滑らかにするフライフォイールです。ツマミだけでも重いのですが、贅沢に部品を使っていたことが分かります。


レバースイッチのツマミです。
裏面の腐食を磨き、カバーの塗装が剥がれているので、再塗装が必要です。


接触不良のファンクションスイッチを取り外しました。


ケースを外すと、銀メッキ接点金具が酸化し真っ黒です。これでは接触が悪くなるはずです。


無水アルコールで洗浄し綺麗になりました。
基板に再実装し、ファンクション切り替えはOKとなりました。
この状態から推測すると、全てのスイッチを分解清掃するべきなのですが、大変なので、今回は問題のあるスイッチに止めました。


マイクのパネルジャックもこの状態です。



トランジスタ(これはFM増幅用の2SC460)のリードもご覧のように黒く酸化しています。
銀メッキリードのトランジスタは全数交換が理想ですが、自分のリスニング用なので、FMフロントエンド部のみ交換としました。
hFEが50と仕様の半分しかないものが2か所ありました。


AM/FMチューナー基板の全体です。FMフロントエンドはバリコンと一体でシールドケースに入っています。


FMのIF増幅は、NEC μPC577Hです。入手した回路図では、三洋のLA-1111(メタルキャンタイプ)になっていました。
これは初期モデルのようです。ピンコンパチではないので、回路も違います。


FMマルチプレックスは、三洋のLA-3310です。これも、回路図ではLA-3311になっています。


困ったことに、写真にあるVR1とVR2が回路図にありません。当然ですが、調整方法も不明です。
仕方がないので、現物から回路を追っかけました。

最終的には、FMのミューティングレベルを調整するVRだと分かりました。
FMのチューニングが+側にずれたときのミューティングレベルをVR1で調整し、−側にずれたときのミューティングレベルを
VR2で調整するようになっています。
設定レベルが不明なので、実際に放送波を受信しながら、丁度よくノイズがカットできるレベルに合わせました。
入手した回路図では省略されているので、改良により調整レスにしたのでしょう。付随するFETやトランジスタも回路図ではなくなっています。


FM-IF増幅回路は、セラミックフィルタが3個入っていますのでIF周波数の調整ができません。
念のため周波数特性を測定してみました。見事に、10.7MHzからはずれており、約10.77MHzがセンターになっていました。
よって、FMフロントエンドにある唯一のIF調整用コアを10.7MHzに合わせると通過帯域がフラットにならなくなります。
この特性は高域側に調整した結果です。


IFジェネスコープでFM検波のS字カーブを見てみました。
縦軸スケールは適当に調整しています。マーカーは10.7MHz±0.15MHzです。
IF増幅回路の周波数特性と検波コイルの特性がマッチしているか怪しいですが、一応、上下対象に近づくように調整しました。
正確には、歪率を見ながら調整しますが、計測器がないのでこのあたりで妥協です。


検波コイルは上下のコアを調整する必要があるのですが、基板を外さないと下側のコアが調整できない設計になっています。
仕方がないので、調整棒を加工して、上側から貫通させて下側のコアを回せる治具を作りました。
ここはサービスマニュアルにも記載がないので、一般的なのでしょうか?


AMのIF特性です。マーカーは455kHz±10kHzです。こちらもセンターを455kHzに調整すると特性がおかしくなるので、
457kHzくらいにしています。縦軸はリニアスケールなので、帯域幅としては10kHz弱程度です。

IF回路の調整ができれば、AM/FMの目盛合わせとトラッキング調整を行います。
マニュアルでは、FMのOSCコイル調整はやらないようになっていますが、トリマだけでは
目盛りが合わせきれないので、微妙に空芯コイルを縮めて上と下で周波数を合わせ込みました。


アンプ基板は、マニュアルに従い、出力段のゼロ点調整とアイドリングを調整します。特に問題もなく完了できました。


出力段のパワートランジスタです。
2SA489/2SC789のコンプリメンタリペアですが、回路図では2SA671/2SC1061となっています。これは初期の製品のようです。
イコライザーアンプやヘッドフォンモニターも動作に問題ないことが確認できました。


一通りの調整が完了し、再組立てしたところです。ウッドケースとシルバーのパネルが、とても心地よい調和を見せています。
この機種の修理記録はいくつか公表されていますが、いずれも改良版のようです。発売後のわりと早い時期に改良したのではないでしょうか?

2022年8月10日
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