TRIO MW/SW/FM 3バンドラジオ AF-251

FM放送が本格的に始まった後の、トリオのコンパクトFM対応3バンドラジオです。
入手時の説明では、「電源入り受信したが、けむりが出てきたのでやめた。」そうです。
試しにスライダックで徐々に電源電圧を上げると、ものすごいハム音がします。
ケミコンが完全に抜けているものと思いますが、真空管は生きているようです。
それ以外に、TUNINGダイヤルが途中で空回りして動きません。

真空管構成:17EW8, 12BA6, 12BA6, 12BE6, 12AV6, 30A5/ナショナル、整流はダイオード。

発売日:発売は1963年(昭和38年)1月に新製品として紹介されています。
入手日:2014年10月


裏側です。左には、外部スピーカー用ジャックとレコードプレーヤ用ジャックがあります。
シャーシの取り出す手順が記載されていて、裏板の黒いネジは外さない構造です。
(バーアンテナがパネルにハトメで固定されています。)


本来は、この底面に回路図が貼り付けられているのですが、綺麗に剥がされています。
破れたので剥がしたのか、意図的に剥がしたのか分かりませんが、ちょっと残念。
代わりに名前のシールが貼られています。以前の持ち主なのでしょう。


シャーシを取り出したところです。かなり埃が堆積しています。
メンテナンス的には、あまりよい設計とは言えないです。
スピーカーの天板付近にアルミコートの厚紙が貼り付けられていますが、出力管からの発熱で
キャビネットが熱変形しないように対策しています。


シャーシとスピーカーを取り出したところ。バーアンテナが裏板に付いています。


上から見ると、こんな感じです。IFTはAM用とFM用が一体になったものです。
バリコンの左にある丸穴は、先行機種AF-250で採用していた、FMの局発・AFC用17EW8の取付穴です。
コストダウンで真空管を減らしたけど、シャーシは共通に使ったのですね。


シャーシ内部です。3バンドのわりには、シンプルな感じです。
どこから煙が出たのかですが、よく見ると分かります・・・・


焼損した部品の拡大写真です。抵抗が真っ黒になっています。
この抵抗は、左の整流用ダイオードにつながる突入電流防止用の22Ωです。下のオイルコンも焼けています。
ダイオードはオリジン電気のSM-150a(400V/150mA)ですが、正常なので、平滑コンデンサが怪しいです。
他の方の修理記録も拝見しましたが、この抵抗の焼損がほとんどですね。本機の弱点です。


取り外したら折れてしまいました。電源を入れたらハム音が出ましたので、かろうじて繋がっていたのでしょう。
この抵抗ですが、元々は1/4Wのように見えます。半波整流電流が流れるので、テスターでは正確な
ドロップ電圧が測定できませんが、1/4Wではかなりの発熱があり、劣化する可能性が高いです。
設計不良かもしれませんね。今回は余裕を見て3Wの酸金抵抗にしました。


予想通りブロックケミコンが完全に抜けていました。耐圧150V、60μFx3です。
通常は、ブロックケミコンは飾りで付けておいて、シャーシ内に電解コンを追加するのですが、
今回はシャーシ内に3個の電解コンを入れるスペースがありません。仕方がないので、分解して内部に
入れ込むことにしました。


最初は右の250V/68μFを3個入れようと調達したのですが、寸法を確認せずに購入したら、
ケースに入らないという失敗をしてしまいました。通販は注意しないとダメですね。
結局、160V/100μFなら2段にして入ることが分かりました。


見てくれは、あまりよくないですが、取り付ければ見えないところなので、これでOKとします。


次はバリコン周辺の修理です。写真で分かるように、RFフロントエンド部は別シャーシになっており
ゴムブッシュで浮かせてるのですが、ゴムが完全に溶けています。


バーアンテナを外して、ネジを外したことろ。バリコンの固定ブッシュも溶けているようです。
ボリュームにも一部かかっていますが、ボリュームに「37.12T」とあるので、昭和37年12月製造の
ボリュームのようです。発売が昭和38年1月ですから、辻褄が合います。


溶けたゴムブッシュを取り去り、適当なサイズのゴムブッシュに置換えました。


ダイヤルが空回りする原因は、ダイヤル糸の劣化もありますが、もう一つ原因がありました。
右側のプーリーが回らないのです。


左側は正常なプーリー。右側が回らないプーリーです。
スペーサーよりも樹脂が盛り上がっているのが分かります。なぜ膨潤したのかわかりませんが、
これでは回らないはずです。


模型用のミニルーターで、膨潤した樹脂を地道に削り、スペーサーの頭が出るようにします。
ポリアセタール樹脂だと思うので、ちょっと削りにくい所があります。
これで、糸掛けをやり直してOKとなりました。


トランスレスなのですが、ヒューズが入っていません。大丈夫だとは思いますが、安全のため
1Aのヒューズを入れました。25mmの小型ヒューズです。


修理完了後のシャーシ内部です。オイルコンは漏れ電流が大きく全滅でした。全数交換です。
バイパス用の電解コンとFM検波回路の電解コンも交換済みです。
珍しくボリュームのガリはありませんでした。バンド切替SWは、接点を清掃しています。


不具合箇所は修理できたので、目盛りを原寸大にコピーして、調整に入ります。
指針を出す必要があるので、便宜上、SWの目盛りをくり抜いています。SWの調整箇所はなく、
MWの調整ができれば自動的にSWも合うような回路設計になっています。
AM(MW, SW)は問題なく、IFT調整と目盛合わせ、トラッキングは完了できました。
FMのIFT調整と検波コイルの調整も完了しましたが、目盛りがどうしても合いません。
75.6MHz〜90.5MHzまでの追い込みが限界でした。これ以上は部品定数を変更するしかありません。


FM用のOSC回路です。小さな基板にコイルが実装されており、外側のメッキ線が1次側、
内側のエナメル線が2次側、つまりOSCコイルです。裏側に15pF固定コンデンサ、左上が調整用の
ピストントリマです。


76MHzと90MHzのときの局発用バリコン容量、固定コンデンサ、ピストントリマの容量を実測し、
目盛りと一致するような固定コンデンサの容量とコイルのインダクタンスを計算で求めます。
結果として、固定コンデンサに4pFのセラコンを追加し、コイルは0.114μHになるように広げました。
通常、メーカー製でこれ程LCを変えることはないはずなのですが、原因ははっきりしません。
これでFMの調整も完了です。


今回交換した部品です。やはり、オイルコンはダメですね。


埃の堆積が気になるので、フロントパネルのアクリルカバーを外しました。
カバーの爪を溶かして固定してあるので、取付時は接着剤で固定しておきます。


ようやく修理完了です。パイロットランプがないので、電源が入っているかどうかが分かりません。
ネオンランプを追加するのが良さそうです。

2024年2月25日
Copyright(c) 2006 Hiroyuki Kurashima All Rights Reserved

←メニューへ