東芝 2バンド9石ラジオ 9TL-432S

壊れていて、ジャンク品として安価に入手したものです。高周波増幅付き9石のため
1960年当時としては、高級機の部類に入る機種です。
カバー付きですが、残念ながらロッドアンテナが折れています。
ジャンクなので動作はしませんが、ダイアルも途中で止まって動きません。
糸掛けもどこかで緩んでいるようです。


TR構成:2SA58(RF), 2SA93(MIX), 2SA92(OSC), 2SA49(IFA), 2SA53(IFA), 2SB54(AFA),
2SB54(DRV), 2SB189X2(PWR)
発売日:1960年(昭和35年)頃
入手日:2016年1月




裏側です。電池専用(単2x4本)、外部入力、イヤホン出力2系統。




乾電池が入りっぱなしでした。嫌な予感がしましたが、乾電池がご覧のとおりです。
有効期限が1987年3月の電池でした。




リアパネルを外したところ。電池はサイドから出し入れしますが、電池ケースが真っ黒!
厚紙でできているので、電池の液漏れ・腐蝕の影響をもろに受けます。



電池の液漏れの影響が周辺にも及んでいます。




内部をすべて取り出しました。フロントパネルは特に問題ありません。




左の小基板は、感度切替えと音質切替えのスイッチです。


電池ケースと接触していたIFTの側面が腐蝕しています。それだけでなく、ダイオード1N60も
アノード側が断線していました。これは検波用なので、音が出ないはずです。
幸いIFTの被害はケースだけでした。ダイオードは手持ちのSD-16に交換します。


電池ケースの下を通っていたロッドアンテナもご覧のとおりです。ただ、1段目から上は折れているので、
元々使えないものです。Φ8.3mmのロッドアンテナなんて、今どき入手できるんでしょうか・・・・
それと、取付ネジですが、何となくピッチが変だと思ったら、インチネジで#6でした。
アンテナだけインチネジというのは、あまり考えられないので、途中で交換したのかもしれません。



RF付きなのでバリコンは3連です。ゴムブッシュが溶けて傾いています。
これでは、糸のテンションが緩くなり、ダイヤルがスムースに動かないはずです。

この3連バリコンですが、ちょっと変なのです。左からANT、OSC、RFで、OSCだけ幅が広いのですが、
実は容量がすべて同じ300pFです。羽の枚数は8枚、10枚、8枚で、OSCだけ羽目のピッチが広いのです。
なぜこの様な設計になっているのでしょう?容量変化率は同じだと思うのですが。



バリコンとダイヤル機構が一体になっているので取り外しました。


プーリーを上から見たところ。初めて見ましたが、ダブルプーリーになっています。
外側(画像下側)のプーリーはダイヤル指針を動かすためのもの。内側のプーリーは
バックラッシュ防止用のものです。ダブルギアのような動作をします。高級機だけあって、
手が込んでいるな〜と感心しました。


ゴムブッシュを交換するためには、プーリーや糸掛けを一旦外す必要があり、とっても嫌らしいです。
ピッタリサイズは無理ですが、タカチのNG-79-1で代用しました。もう少し厚みが欲しいところです。


ケースに組み込むと、こんな感じです。左右のスプリングが外側、上のスプリングが内側です。
実によく考えられています。


ダイオード交換で、一応音が出たので、外部電源をつなぎ、IFT調整、目盛合わせ、トラッキング調整を
しました。受信はできるのですが、ボリューム最大でも音が小さいです。どこかが故障しているようです。
外部入力から発振器の信号を入れても、音が小さく歪んでいるので、低周波段がおかしいです。
結果的には、ドライバー段のカップリングコンデンサの容量抜けでした。交換でがぜん大音量に。
ということは、他の電解コンデンサも怪しいので、全部チェックしたところ、全ての電解コンが劣化
していました。特に電源電圧は6Vなのに、定格6Vの電解コンを使っています。当時の設計では、
マージンという考え方はしていなかったのでしょうか?現在では考えられない設計です。

実は、このラジオは、部品交換するには、ダイヤル機構の板金を外さないと、基板裏にアクセスできない
部分があります。メンテナンス上は再考して欲しいところです。


電池ボックスのマイナス端子は、ご覧のように電池の液漏れで酷い状態です。


ピカールでクリーニングすると、結構綺麗になりました。メッキできれば理想的ですが、、、、


厚紙のボックスも、内部を洗浄して乾燥させました。マイナス電極を接着して、一応、使える状態には
なりました。


折れたロッドアンテナ探しが、今回の最大の難関でした。太さ8mmのアンテナが、通販では見つからず、
秋葉原を探してもダメでした。最後の望みで、横浜のシンコー電機に行ったら、何とありました!!
上が折れ曲がる特殊タイプでしたが、太さはピッタリ。高さ調整が必要ですが、スペーサーで何とか
なります。


ロッドアンテナの長さが少し短いので、スペーサーで延長しようと思いましたが、ケース側の台座を失念。
購入したスペーサーでは合わず、仕方がないので、あり合わせのナットで高さ合わせをしました。


最終的な仕上がり内部です。
電池ボックスですが、液漏れのせいで、内部が若干狭くなっていたようで、マイナス側の2個の電池が
途中で引っかかり気味になってしまいます。広げようがないので、何十回となく電池を出し入れして
何とか振れば出てくる様にはなりました。


交換した部品一式。ケミコンは次のとおり。
60μF/6V==>100μF/15V, 8μF/3V==>10μF/25V, 8μF/5V==>10μF/25V,
10μF/6V==>10μF/25V, 40μF/3V==>47μF/25V



ようやく完成です。アンテナがオリジナルではありませんが、それなりに高級感が出ています。


革ケースも少し磨いて綺麗にし、ロッドアンテナ出口を広げてやればいい感じですね。


2024年11月12日
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