ビクター 11A-7D

日本ビクターの11石7バンドトランジスターラジオです。
1962年発売で、当時ビクターは、ベリ・シリーズとして海外放送局を受信しベリカードを収集するためのラジオを発売しました。
これは最上位モデルです。放送帯域毎のバンド構成となっていますが、短波帯はファインチューニング機構が欲しいところです。
高い周波数では微調整が難しいです。
単一乾電池6本、又はACアダプタでDC9Vを供給します。
同一製品の海外ブランドとして『NIVICO』がありますが、部品取り用として2台目を入手したものがまさしくそれでした。
機構的な設計が改良されています。

受信周波数:
MW 535〜1605kc
SW1 2.1〜 4.5Mc
SW2 4.5〜10.0Mc
SW3 11.6〜12.1Mc
SW4 15.0〜15.6Mc
SW5 17.6〜18.2Mc
SW6 21.3〜22.2Mc

トランジスタ構成:
RF-Amp:2SA104, MIX:2SA104, OSC:2SA104, IF-Amp:2SA101x3, DET:2SA101, AF1:2SB173, AF2:2SB175,
AF-Amp:2SB135/136(オリジナルは2SB172x2)
MW, SW1は内蔵バーアンテナとロッドアンテナで、SW2〜SW6はロッドアンテナのみで受信します。外部アンテナ端子はありません。
大きさWxHxD=約33cmx21cmx13cm(取っ手、アンテナ含まず)。
(2010年11月入手)


入手時の状態です。
ハンドルの樹脂が紛失しているため、内部のアルミ金具が折れ曲がっています。
ここは修復できないので、部品取り用にもう1台入手する必要があります。
左側ツマミがボリューム、右側ツマミがチューニングです。
右下の赤い目盛りがバンド表示です。ボリュームのガリはありますが、各バンドとも受信はしています。



ダイヤルライト用のプッシュスイッチと音質調整ツマミです。


バンド切り替え用のスイッチが右サイドにあります。


裏面です。
PHONE用入力ピンジャック、入力切替スイッチ、DC9V入力端子があります。



裏蓋が電池ケースになっています。液漏れがかなり激しかったようで、電池端子がかなり腐食しています。




裏蓋の定格ラベルです。




内部全体。前面はプラスチックですが、周囲と裏面は木製です。電池の液漏れによるシャーシの錆があります。
左側は高周波回路、右側はIF増幅以降で分離されています。
シャーシはゴムブッシュで固定されていますが、ゴムがすべて溶けています。この修理には結構苦労しました。


シャーシを取り出した前面です。糸掛けが2つありますが、右上はバンド表示用です。


7バンドの、アンテナコイル、局発、混合と3ステージのロータリーSWで切り替えます。
ここの部分の回路はすべてラグ端子に配線されています。
真空管ラジオの真空管だけをトランジスタに置き換えたような雰囲気です。


大型の6連バリコンです。
430pF×3はMW〜SW2まで使用し、約35pF×3はSW3〜SW6で使用しています。
430pFには外付けで25pFのトリマーが接続されます。
電池の液漏れによる腐食がありますが、かろうじて羽根は無事でした。




スピーカの下にIF以降のプリント基板があります。左から混合出力信号が入ってきます。シャーシに開いた穴はコア調整用です。




IF増幅部〜低周波増幅部のプリント基板です。
左端のIFT2個ペアになっている部分の接続が変わっていたのでラジオ工房の掲示板で情報をいただきました。
下に部分的な回路図を示します。RF回路からはオープンコレクタで接続されます。
終段は、2SB172のプッシュプルだと思われますが、修理されたらしく、2SB135と2SB136というアンバランスな石になっていました。


IF増幅部は、通常は455kHzで最大感度になるように調整するのですが、複同調回路で帯域を広げている可能性があるので、
簡単に周波数特性を測定してみました。




IF特性です。ミキサー段に400Hz/60%変調波を入力し、スピーカ出力電圧を測定しました。
単峰特性のように見えますが、1kHzほどずれているので、微調整する必要がありそうです。


ゴムブッシュはすべて溶けているので、一端きれいに除去した後、適当な大きさのブッシュを組み合わせてみました。
堅さと大きさが適当なものを探すのにかなり苦労しました。



ハンドルの部品取りで入手した、輸出用のNIVICOブランドのものです。型式が“11A-7”となっておりDが付いていません。
理由は不明ですが、ひょっとすると、DはDomesticのDかもしれません。回路は同じですが、板金構造が改良されていました。



部品取り用からハンドル部を付け替えて、トラッキング調整以外は完成です。
RF部の調整は、回路を追いかけるのが難しいので、回路図が入手できればやりたいところです。

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